複合現実(MR)とは

今、複合現実(MR)によって現実世界とデジタル世界が融合しつつあります。Blackberryの登場で携帯電話をポケットに入れて持ち運べるようになり、インターネットによってオフィスが接続され、今や自宅へのテレビ番組のストリーミングが可能になったように、MRは、私たちの暮らし方、働き方に革命をもたらす次なるテクノロジーとして期待されています。

Metaのミッションはコミュニティを作る力を人々に提供することであり、あらゆる人の働き方を改善できるMRは、まさにそれを実現します。

MRのしくみ

MRとは、完全没入型の仮想現実(VR)と、デジタルオブジェクトを追加して現実世界を拡張する融合体験(この意味で拡張現実(AR)と呼ばれることも)の両方を内包するテクノロジーです。「VR + AR = MR」と考えると分かりやすいかもしれません。

MRがもたらすメリット

Metaでは、すでにMRを日常的に使用しているさまざまなビジネスと話す機会がありますが、どのビジネスも社員と組織にとって次のようなメリットがあると口をそろえます。

社員へのメリット

• 「実際にそこにいる」感覚を味わえる: MR体験には、テクノロジーの存在を忘れて目の前のことに没頭できるほどの没入感があります。

• 会話がより自然なものになる: バーチャルなアバターに表情や手のジェスチャーが正確に反映されるため、対面しているときのように同僚と話すことができます。

• 気が散りにくい: 「ながら作業」やカメラオフの誘惑がなくなるため、誰もが完全に集中できるようになります。

• 利便性が高い: 画面を何枚も並べたり環境をカスタマイズしたりして理想の作業スペースを作り、どこにでも持ち運ぶことができます。

組織へのメリット

• 社員のエンゲージメントが向上する: 双方向の体験を共有するほうがビデオ通話よりも相手の注意を引きやすく、リーダーは社員をより身近に感じることができます。

• 生産性が向上した: 複雑なアイデアを共有しやすくなったり、多様なステークホルダーをタスクに巻き込んだりできるようになることで、完了までにかかる時間が大幅に短縮されます。

• コラボレーションが求められるタスクをスムーズに行える: 作業空間に没入すれば、成果物に対してリアクションをして手直しをすることができます。

• リモートワーカーがよりつながりを感じられるようになる: 世界中のどこにいても、ハイブリッドチームがより自然でインクルーシブなかたちで作業をし、コミュニケーションを取ることができます。

• より良い成果につながる: 以上すべての理由から、さまざまなビジネスがMRによってより効果的に働けるようになったと語っています。VRを使用している被雇用者の74%が、ヘッドセットによって仕事の質が向上したと答えています。

MRを活用できる仕事の領域

MRは、多種多様なタスクへの取り組み方を変革しています。MRを利用することのメリットは、4つの重要領域に分けられます。以下の各項目を展開して詳しく確認しましょう。

MRは、制作面のさまざまな課題を解決するのに役立ちます。以下は、Meta Questヘッドセットで作業することで解決できる課題のほんの一部です。

課題1: 2Dのツールで3Dのオブジェクトを作っている

クレイモデルやプロトタイプの製作は、貴重な時間とリソースを浪費します。平面のスクリーンに立体的なものを描画しても、せいぜい実物を表現することしかできません。MRなら、デザインの中に入り込み、細部を詳しく把握することができます。ビジュアライゼーションを強化することはデザインプロセスにメリットがあるだけでなく、ステークホルダーから承認を得る段階においてもかつてない没入感でアイデアを売り込めるメリットがあります。

課題2: ミスを回避する

ささいなミスであってもプロジェクトの財政に大きく響くことがあります。超高層ビルのように大規模で複雑なものを設計する場合はなおさらです。2Dツールには限界があるため、製品開発サイクルがかなり進んでからミスが発覚することも珍しくありません。MRによってさまざまなステークホルダーによる確認プロセスがシンプルになれば、早い段階での問題の特定と修正をわずかなコストで行えるようになります。建設会社のMortensonがイリノイ州のデータセンター設計プロジェクトで実現したのがまさにこれで、同社はMeta Questデバイスを使って数万ドルの費用を節約しました。

課題3: 制作がサイロ化している

製品デザインであれBIMであれ、特に複数のステークホルダーがからむ場合には、うまく連携できないと良いアイデアは出てきません。MRでは、ビデオ通話と違って「その場にいる感覚」が生まれます。同僚やクライアントが地球の反対側にいる場合でも、自然な会話を交わしてリアルタイムにデザインをカスタマイズし、本当の意味でクリエイティブに業務を進めることができます。

課題4: 予算を守るのが難しい

イノベーションを加速させるには、通常、高価な機材に投資するかキャパシティを増やさなければなりませんが、Questデバイスならその必要はありません。MRでラピッドプロトタイピングをすれば、諸経費を浪費することもプロトタイプ製作で材料を無駄にすることもなく、時間とお金を節約しながらバーチャルなデザインを構築、テストすることができます。

課題5: 市場投入までに時間がかかる

製品や空間のデザインでは、いかに短時間でできるかがとにかく重要です。競合企業に先行することを目指す場合でも、顧客の需要に急いで対応したい場合でも、MRなら開発期間と納期を短縮できます。スピーディーにテストを行い、モデルを物理的に作り直すことなくその場で修正できるようになれば、真にアジャイルな働き方が可能になります。

課題6: 手の込んだデザインを説明するのが難しい

「デザインに求められることが複雑で、アイデアがなかなか人に伝わらない」。そうした悩みも、MRなら解決できます。既存のインフラと簡単に接続できるため、確かな根拠に基づいて意思決定をするために必要なデータが手に入ります。リアルタイムのフィードバックを得ることで、どれほど複雑なデザインブリーフであってもアイデアの妥当性に自信を持つことができます。

課題7: アイデアを掘り下げきれない

デザインの日々の課題を克服することで、クリエイティブチームは従来探索しきれていなかった領域のアイデアまで検討できるようになります。3Dで作業することによって、目の前のデザインの洗練、改良、再構築がやりやすくなるだけでなく、デザイナーの思考の幅も広がります。デザインチームの可能性が広がることは、誰にとってもメリットしかありません。

MRが解決するトレーニング面の課題

現在のハイブリッドな労働環境で競争力を保つには、継続的なトレーニングへの投資が必要です。しかし、多くのビジネスが時間的な制約や予算の逼迫に直面するなかで、特にリモートワーカー向けのトレーニングは軽視されがちです。どこでどのように働いている社員も学べるように、学習と能力開発の戦略を進化させなければなりません。そこで、MRの出番です。

課題1: トレーニングを効率化する

Metaが調査したところ、ソフトスキルのトレーニングを受けた被雇用者のうち、オンラインよりもVRのほうが習得速度が上がったと感じた人は61%いました。ハードスキルのトレーニングではこの割合は59%でした。従来のトレーニングの場合は講師と物理的な場所が必須で、長距離の移動が必要になることもあります。どれも、金銭的・時間的に大きな負担です。ヘッドセットの場合は初期投資が発生しますが、長期的な効率化による費用の節約ですぐに回収できます。

課題2: 規模を拡大する

世界中から人材を獲得することのハードルはかつてないほど低くなっていますが、研修会場に全員を集合させる調整業務は、まさに悪夢です。MRでのトレーニングなら、リモートチームやハイブリッドチームがどこにいても、いつでも集められます。それに加え、3,000人以上のトレーニングをVRで行う場合は従来の方法と比べて52%のコスト削減になるという最新の研究結果も出ています。

課題3: 異なる学習スタイルや学習速度に対応する

学び方は人それぞれ違います。トレーニングのペースやレベルが合っていないと、関心を失ったり置き去りにされたりする社員が出てくる可能性があります。MRなら、各人が自分に合ったペースで学習を進められます。個人別のトレーニングになりますが、受講者どうしでやり取りしながら進められるため、孤独感はありません。

課題4: 入社時トレーニングを効果的に行う

会社のオンボーディングが優れていたと考えている被雇用者は12%しかいません。オンボーディングを没入空間で行うことで、新入社員の入社時トレーニングを標準化して入社前に職場のことをよく知ってもらえば、もっと早く慣れさせることができます。

課題5: スキルを身につけさせる

退屈なトレーニング動画を見せたり、分厚いマニュアルを読ませたりするのは、新しいタスクを教えるのに最適な方法とは言えません。スキルギャップや人材不足を補う必要に迫られている場合は、MRが社員にスキルを習得させる最適解かもしれません。製薬大手のPfizerは、VRヘッドセットの導入でトレーニングの時間を40%短縮できた経験から、このことを身をもって学びました。

課題6: 現実と同じ体験をさせる

被雇用者の65%は、オンラインや動画よりもVRでソフトスキルのトレーニングを受けたほうが自信を持ってスキルを実践できると感じています。この数字はハードスキルのトレーニングの場合もほぼ同じで、ヘッドセットで学んだ後のほうが自信が付いたと感じている人は60%います。なぜこのような結果になるのでしょうか。それは、従来型の学習の大半では実際に業務をする現実世界の状況を再現できないからです。MRを使ってトレーニングをすれば、より現実に近いシナリオを体験し、仕事に自信を持つのに必要なスキルを練習しやすくなります。

課題7: リスクを軽減する

リスクが大きい環境や業種の場合、OJTで学ぶのは危険が多すぎるかもしれません。MRなら、学習者は安全に失敗できます。詳細なシミュレーションにより、実害を生じさせずに実践的なスキルを練習する機会が得られます。

MRが解決するナレッジワーカーの課題

米国でフルリモートで働く人の数は、2018年から2023年にかけて4倍に増えました。これは、ミーティングをするうえでの困難が増えたことを意味します。MRなら、地球の反対側にいる相手とあたかも同じ場所にいるように感じられるため、ハイブリッドチームがよりつながりを感じることができます。その理由を以下で説明します。

課題1: 生産的なミーティングを行う

ミーティングを正しく行うことは重要です。MRでは全員の関心を向けさせることができ、それだけですでにミーティングは成功したも同然ですが、バーチャルオフィスをカスタマイズして仕事にインスピレーションを与えることも可能です。Meta Horizon Workroomsなら、手持ちのタスクに合わせて次回の進捗報告ミーティングを街中の超高層ビルで行うことも、砂浜の波打ち際で行うこともできます。

課題2: 意味のある交流をする

従来のミーティングプラットフォームでは、コミュニケーションの仕方が制約されます。音声通話では相手の仕草が見えませんし、ビデオ通話では隣の人とちょっと言葉を交わすことができません。その点、MRでのミーティングは自由です。アバターを使うことであたかもその場所にいることが感じられ、スペーシャルオーディオによってあらゆる方向や同僚がいる方向から声が聞こえるように感じられます。

課題3: チームの結束を高める

特にリモートで働いている同僚とつながる機会が足りないという声が多く聞かれます。とりわけ、オフィスの会議室とオンラインに分かれてミーティングに参加している場合、関係を築くのは一筋縄では行きません。VRに没入して全員が同じ場所にいると感じることができれば、親しい関係を築いてチームの絆を深めるということがしやすくなります。

課題4: 目の疲労を軽減する

リモートミーティングが当たり前になった今、スクリーンを見続けることによる疲れ目が仕事に影響しやすくなっています。VRならスクリーンを意識することはありません。ヘッドセットを着ければ、職場の中を自由に動き回ってアバターを介して気持ちを表現できるため、仕事にもっと動きが生まれます。Questには、スクリーンが必要になったときに巨大なスクリーンを3つまで表示できるオプションがあるため、生産性が犠牲になることもありません。

課題5: 集中力を持続させる

「トピックがつまらない」「物に気をとられる」「話が脱線する」など、対面やリモートでのミーティングには集中力が落ちる要素がいくつも潜んでいます。ヘッドセットを着ければ、周囲に気が散らず、参加者が目の前のタスクに100%集中できます。

課題6: 全員の意見を聞けるようにする

ハイブリッドワーカーの38%はヘッドセット使用時のほうがやり取りに自信を持てると感じている、という調査結果もあります。VRなら、リモートワークならではの自由さと柔軟性、物理的なオフィスで感じるつながりと帰属意識という、両方の良いとこ取りをすることで全員を巻き込みやすくなります。

MRが解決するコミュニケーション面の課題

優れたコミュニケーションチームは、顧客や取引先と効果的なやり取りを交わすだけでなく、社内の一体感の向上においても要の役割を果たします。VRを使用することで仕事での一体感が増すかという問いに対しては、77%もの労働者が同意しています。MRで集まったほうが、エンゲージメント、インクルージョン、会社とのつながりを強く感じられます。MRは、一体感を高めるうえでのさまざまな課題の克服に役立ちます。

課題1: 作業環境が合わない

被雇用者の85%は、作業環境が自分のムードと生産性に影響すると考えています。ヘッドセットを支給してオフィスとVRのどちらで働くかを社員が決められるようにすれば、誰もが自分の理想のMR環境と楽しく働ける場所を作ることができます。

課題2: チームを称える場がない

社員は、自分の頑張りが認められたときにチームの一員であることを感じやすくなります。MRを使えば、雇用主がチームの成果に光を当ててチームを称える場が生まれます。没入型の全社集会を開いたり、功労者を顕彰するバーチャルな殿堂を作ったりすれば、士気が高まる可能性大です。

課題3: 社員のエンゲージメントが低い

キャリアパスがはっきりしていれば、社員は自分の職務に力を注ぎ、同僚の職務を支えやすくなります。適切な開発者の手を借りれば、トレーニングのゲーミフィケーションと能力開発プログラムの明確化を実現する人事ソリューションを構築できます。

課題4: 多様で大所帯のチームをまとめる

1つのやり方で職場の一体感を醸成することはできません。チームビルディングのアクティビティが効く人もいれば、相性がよくない人もいるでしょう。MRによってデザインアイデアの修正が簡単になるように、人事もMRを使うことで、つながりを強くする方法を見つめ直せるようになります。

課題5: コミュニケーションの壁がある

多様な社員を相手にする場合は、それぞれの言語で、それぞれに合った言葉遣いをしなければなりません。VRミーティングなら、大勢に向けたプレゼンテーションをリアルタイムにあらゆる言語で聞き、発言することができます。全員に同時に同じメッセージが伝われば、社員が一体感を覚えやすくなります。

課題6: 偶発的な雑談がなくなる

物理的に同じ空間にいないと、自然発生的な社員間のつながりは生まれにくくなります。アバターとバーチャル空間を使用するMRなら、ばらばらな場所で働いている社員どうしがデジタルな廊下でばったり会って会話をし、良好で健全な人間関係を作れるようになります。エクステンデッドリアリティのクリエイティブスタジオであるAgile Lensは、こうした課題解決の専門家です。

課題7: 上級職がサポートできない

一体感はトップを起点に生まれます。MRなら、より多くの上級職が部下とのつながりを強く感じられます。MRを使うことで、上級職がフロントラインワーカーの日常業務を没入空間で体験して部下に対する理解を深めたり、チームのそばにいて重要な問題を気楽に話せる場を作ったりすることができます。

仕事に適したMRヘッドセットを選ぶ

ビジネスでのMRの活用方法を理解することもそうですが、ニーズに適したヘッドセットを選ぶことも同じくらい重要です。ここでは、Meta Quest 3、Meta Quest Pro、Meta Quest 2について詳しく見てみましょう。

業務をMRに移行する方法

MRで何ができるのかが分かったところで、次はMRに移行する戦略を立てましょう。以下の7つのステップが参考になるはずです。

ステップ1

キックオフ – 重要なマイルストーンが明確になるように、導入のタイムラインを固めます。IT部門から予算を確保し、必要なハードウェアを購入します。

ステップ2

ユースケースを作り、KPIを立てる – VRのパイロットを成功させるには具体的な目標が必要です。何を達成したいのかを決め(例: クリエイティブチームの機敏性を高め、市場投入までの時間を短縮する)、正しいKPIを立てたら、テスト対象者(例: デザインチーム)とやり取りを始めます。

ステップ3

エグゼクティブスポンサーを確保する – 経営陣の賛同がないことも、テクノロジーのパイロットプロジェクトが失敗する原因の1つですす。賛同を得る(そして資金やプロジェクトの運営面の支援を得る)には、経営陣にVRを試してもらい、実際にアハ体験をしてもらうのが一番です。そこまでできたら、ユースケースとKPIに対する意見をもらい、定期的な報告の場をセッティングしましょう。

ステップ4

VRアプリを選ぶ – ハードウェアはMeta製ですが、VR体験を実現するのはMetaのストアにあるアプリです。デザインチームで使えるアプリにはサードパーティが開発しているさまざまなものがあります。例えば、Gravity SketchやShapesXRなどです。あるいは、自社で独自に開発することもあるかもしれません。どちらを選ぶ場合でも、テストチームとの定期的なレビューセッションを設け、フィードバックに基づいて改良を繰り返しましょう。

ステップ5

ハードウェアとソフトウェアを設定する – Meta Quest for Businessベータプログラムに登録すれば、デバイスとアプリの管理コントロールにより、スピーディーに、スムーズに、安全に導入を行うことができます。

ステップ6

パイロット版をリリースする – ヘッドセットをアクティベーションし、クリエイティブチームでのテストを開始します。テクノロジーパートナーがいる場合は、パートナーと連携してオンボーディング、デモ、トラブルシューティングを設定してください。KPIへの影響をトラッキングし、規模を拡大する方法の検討を開始しましょう。

ステップ7

規模を拡大する – テストチームから良い結果が上がってきたら、エグゼクティブスポンサーに報告し、追加のユースケースと予算計画を示します。ヘッドセットを購入し、ステップ1から繰り返して規模を広げていきます。